【改正派遣法のポイント解説③】 離職後1年以内の労働者の派遣の禁止
2012/10/11
今回の派遣法改正では、派遣元にも、派遣先にも、関係する改正点がいくつかあります。
私もセミナーなどでしばしばお話ししていますが、派遣元・先の両方に関わる点こそが、実務上注意しなければならないポイントなのです。
その最たるものが、「離職後1年以内の労働者の派遣の禁止」です。
これは、もともとA社で働いていたBさんが退職した場合、辞めてから1年間は、A社はBさんを派遣社員として受け入れてはいけないというルール。
今まで勤務していた人が家庭の事情で退職したけど、しばらくしたら派遣さんとして戻ってきて、また頑張って・・・。
こんなケースは決して少なくはないですね。
私が知るだけでも、結婚・出産や家族の介護、配偶者の転勤を理由に退職したり、経済的な事情から派遣社員として復帰するなど、いくつかのパターンがあります。
にも関わらず、この改正点は新聞などでもあまり触れられていない気がします。
今回の派遣法改正が多岐に渡ることと、このルールが少し複雑で世間的にはなかなか理解しづらいことも、考えられるでしょう。
実際には離職して1年以内の労働者には厳格に適用されるルールなので、現場実務への影響はとても大きいのです。
派遣先さんでもまだ知らない方も多いので、どんどん情報として伝えていっていただきたいものです。
このルールの例外は、「60歳以上の定年退職者」。
「60歳以上」でなおかつ「定年」を迎えた人であれば、退職してから1年以内でも元の職場で派遣社員として働いてもらうことができます。
来年4月からの高齢者雇用安定法の改正にも対応したルールですが、これからは高齢者の方の雇用ルールの構築が、今まで以上に重要になってきます。
在職中の年金の問題も含めて、企業が人材を有効活用する上での大切なテーマですね。
退職後1年以内に派遣社員を受け入れてはいけないというルールは、「事業所」ではなく「会社」単位で判断されます。
ですから、10月31日に名古屋支店を退職した人を、翌年4月1日から派遣社員として受け入れたいという場合、同じ名古屋支店で許されないことはもちろん、東京本社でも、三重営業所でも、認められないのです。
たとえ短期間のパートやスポット的なアルバイトとして勤務していたに過ぎない場合も、同じです。
この点は、本当に過酷なルールなのです。
大きな会社の場合、はるか遠くの支店や営業所で、しかも短期のパートで勤務していた人を100%管理するのは相当困難ですが、これは派遣元から派遣先に対してなされる通知を見て、派遣先が判断することになっています。
派遣先への通知には、氏名、性別、保険の加入状況などが書かれていますが、名前や性別を見て、「この人は、半年前にうちにいた!」ということをチェックするわけですね。
理屈の上では整然としていますが、実務的にはかなりハードルが高い部分もあると思います。
現実的には、派遣元の方でもある程度は協力や配慮をしていく必要がありますね。
派遣登録や雇用契約を結ぶ際に、本人と派遣元との信頼関係をしっかりと構築する努力が、今まで以上に求められるでしょう。